離婚と社会保険

年金分割の仕組みと手続き

投稿日:2018-07-05 更新日:




平成19年を境に、妻が60歳以上の離婚(いわゆる熟年離婚)の割合は、上昇傾向にあります。

その理由の一つと考えられるのが、平成19年に開始された「年金分割」という制度です。

人生100年時代と言われる中、年金は老後の生活に欠かせません。

ところが会社員だった夫と専業主婦だった妻が年金分割をせずに離婚すると、老後にもらえる年金額には大きな格差が生じます。

今から離婚の手続きを始める人、そして離婚を考えている人に向けて、今回は年金分割の仕組みとその活用方法について解説します。




国民年金と厚生年金

20歳から60歳までの全ての国民は、国民年金に加入しなければなりません。

国民年金や厚生年金は公的年金といい、主に65歳からの生活費の保障を行う年金保険です。

もらえる年金額は、国民年金、厚生年金で異なります。

国民年金では、もらえる年金額は年金保険料を払い込んだ期間で変化し、毎月の保険料は収入に関わらず定額となります。

平成30年度の国民年金保険料は月額1万6,340円です。

年度が変わるごとに数十円~数百円ほど上下します。

一方、会社員や公務員等が加入する厚生年金は、国民年金の上乗せとして、さらに多くの年金保険料を払い込むことができます。

扶養されている妻は何の年金に加入しているの?

厚生年金の加入者に扶養されている配偶者は、国民年金の第3号被保険者といい、国民年金の加入者となります。

つまり会社員等の妻は、保険料の負担がないのに国民年金には加入できているのです。

国民年金、厚生年金はいくらもらえる?

国民年金は、20歳から60歳までが加入期間です。

したがって最も多く年金を受け取れる人は、最大40年間、月数にして480月分の保険料を払い込んだ人になります。

もし全ての期間の保険料を支払った場合、もらえる年金額は、平成30年度で77万9,300円です。

一ヶ月の生活費に換算すると、6万4,941円になります。

ただし、保険料免除制度など利用している場合、もらえる年金額は少なくなります。

国民年金が平均でいくら支給されているかというと、厚生労働省による平成28年度厚生年金保険・国民年金事業の概況では

・国民年金の平均月額 5万5,464円

・厚生年金の平均月額 14万7,927円(公務員を除く)

です。

平成28年度厚生年金保険・国民年金事業の概況

厚生年金の保険料は、加入者の標準報酬月額(毎月の給与の平均のようなもの)に保険料率を掛けて計算されます。

つまり給与が高い人ほど、もらえる厚生年金の額も多くなる仕組みなのです。

しかし、これでは主婦が離婚した後、老後の生活を送るにあたってあまりに不平等ですよね。

そこで、年金分割という制度が利用されているのです。

年金分割については後に解説します。




60歳からの年金保険

 

年金は60歳まで

国民年金の加入は、基本的に60歳で終わりです。

ただし、任意で65歳までは加入を継続し、年金額を増額するという選択肢もあります。

また、60歳になる前に夫が退職して会社の厚生年金から脱退した場合、夫婦ともに60歳まで国民年金の第1号被保険者となります。




年金分割とは 仕組みと手続き

さて、夫の扶養に入っている妻は、国民年金にしか加入できていません。

厚生年金と国民年金で受給額に差が生じることは、前記のとおりです。

そこで、平成19年から年金分割という制度が始まりました。

年金分割とは、婚姻してから離婚するまでの厚生年金部分を分けることにより、国民年金の受給額との差を解消するための制度です。

年金分割とは厚生年金部分を分ける制度

婚姻期間中に築いた財産は夫婦が2人で築いたものです。

その考えからすれば、厚生年金つまり国民年金の上乗せ部分とは、妻が家庭を守っていたからこそ得られた財産といえます。

したがって、婚姻期間中の厚生年金部分に該当する年金の半分(平成20年4月以降分。それ以前は協議で決める)を分割することを定めたのが、年金分割なのです。

この制度から生まれた選択肢は、国民年金の第3号被保険者である配偶者が年金をより多くもらうために、60歳まで離婚を待つというものです。

平成16年から平成25年までの司法統計で、裁判所が扱った離婚調停や裁判等の婚姻関係事件数のうち、妻の年齡が60歳以上の件数の推移を調べてみました。

婚姻関係事件数 妻の年齡が60歳以上の件数 割合
平成16年 67688 3786 5.6%
平成17年 65340 3646 5.6%
平成18年 65170 3538 5.4%
平成19年 65265 3957 6.1%
平成20年 66477 4385 6.6%
平成21年 68156 4598 6.7%
平成22年 69684 4878 7.0%
平成23年 67779 4821 7.1%
平成24年 67892 5017 7.4%
平成25年 66824 4973 7.4%

妻が60歳以上の事件数割合が、平成19年を境に上昇していることがわかります。

もちろん年金分割のみが原因とは言えませんが、熟年離婚の一つのきっかけになっていることが推察できます。

離婚のタイミングは60歳が良い?

離婚を考える主婦が老後の生活保障を考えた場合、離婚のタイミングを60歳以降とすることにはメリットがあります。

まず厚生年金が、標準報酬月額の影響を受けることです。

標準報酬月額とは、会社から受け取る毎月の給与の平均のようなものと捉えて下さい。

この金額が高いほど、もらえる年金も多くなる仕組みです。

そして給与とは、一般的に勤務期間が長ければ上がります。

ここに離婚を60歳まで待つことのメリットが隠れているのです。

例えば勤続20年のベテラン社員となった夫が稼いでいる給与を、離婚後に就職した妻がすぐに稼げるかというと、かなり難しいでしょう。

この場合、妻の目線で老後の保障だけを考えれば、夫の高額な給与から厚生年金保険料を60歳まで納めてもらい、それを分けてもらった方が高い老後の生活保障を得られるのです。

しかも、退職金の分与額の増加も期待できます。

したがって、あくまで主婦の目線で老後の保障だけを考えた場合ですが、離婚のタイミングを夫が60歳を迎えた後とすることは、かなりメリットがあるといえるのです。

請求期限は2年まで

年金分割を受けるためには、年金事務所に標準報酬改定請求書を提出して分割の請求を行う必要があります。

この請求は、離婚をした日の翌日から起算して原則2年以内に行う必要があり、その後は請求できなくなるので注意が必要です。

ただし期日後1ヶ月以内に審判が確定、あるいは調停が成立するなどした場合は、所定の要件を満たせば請求が認められることがあります。




年金分割の仕組みと手続き まとめ

離婚後の夫婦の年金分割の仕組みとその手続き解説しました。

お役に立てば幸いです。







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